どうも、がんばらないネコです。Twitterで活動しているサッカー分析ブロガーです。
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— がんばらないネコ@サッカー分析 (@Ganbaranai_Neko) December 5, 2022
優勝したアルゼンチンについて、「なんで優勝できたの?」「どこが良かったの?」など勝因が気になる人は多いと思います。
今回の記事では、アルゼンチンの勝因を解説しています。
この記事は次のような人にオススメです!
- アルゼンチンがやったことを知りたい
- アルゼンチンの勝因を知りたい
- 日本が今後やるべきことを知りたい
衝撃の初戦敗北からの優勝に、「一体何が起きたのか?」と思っている方も多いかと思います。
今回の記事はアルゼンチンの良さ、他のチームとの違い、日本が学ぶべきことを詳しく解説していきます。
今回の記事で読めば、「アルゼンチン強さの秘密」や「優勝するために必要なこと」などを知れますよ!
サッカーが好きな方や興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
それでは、どうぞ!
サッカーはカオス(予測不可能)なもの
まず知ってもらいたいのは、どれだけ練習しようとも、サッカーは予測不可能、いわゆるカオスなものであるということです。
パスしたボールがどこに飛んでいくのか?
シュートしたボールがどこに飛んでいくのか?
ドリブルしたボールがどこに転がっていくのか?
相手がどういう行動をするのか?
これらすべてを完璧にコントロールするのは不可能であり、多くの場面で予測とは違った結果になるのがサッカーです。
そんなカオスなスポーツであるサッカーで勝つためには、以下の3つの要素を揃える必要があります。
- 勝利の確率を上げる選手の能力
- 勝利の確率を上げる優れた戦術
- 勝利を決定づける大きな運
世界には数え切れないほどの選手が存在し、どの選手もボールをうまくコントロールできるように日々練習しています。
ただ世の中には、普通の選手と比べて、ボールをよりうまくコントロールできる才能を持った選手がいます。
そのような選手たちがチームに揃うことは、チームの勝利に不可欠です。
なぜなら、すべてのプレーは選手が生み出し、選手の能力によってプレーの質が変わり、勝利の確率も変わるからです。
まずは優れた選手たちが揃うこと。これが勝利への基本的な道です。
また、優れた選手たちがチームとして動くことも不可欠です。
バラバラに動いていては、ボールの行方をうまくコントロールできず、効果的にゴールを奪えたり、失点を防ぐことができません。
優れた選手たちが、チームとして効果的に動くこと、つまり優れた戦術も勝利に不可欠です。
優れた戦術は、カオスの中に規律を生み出し、試合をある程度コントロールできて、勝利の確率を上げます。
しかし、どれだけ優れた選手を集めても、どれだけ優れた戦術を実行しても、完璧にボールの行方をコントロールできません。
それがサッカーというものであり、今も昔も、そしてこれからも変わらないサッカーの本質です。
そんなサッカーにおいて、最終的に勝利を決定づけるのは”運”です。
プレーの成否や試合の勝敗は、最終的には運を掴むかどうかにかかっているのです。
ベスト8で敗退したブラジルやイングランドといった強豪に足りなかったのは、運の要素が大きいです。
どちらのチームもあと1点取っておけば、ベスト4に進んでいたはずです。
しかし、彼らは不幸にも運を掴めず、完全に優位な状況にありながらも敗退してしまいました。
では、優勝したアルゼンチンはどうでしょうか?
言わずもがな、アルゼンチンの勝因は、以上3つの要素をすべて揃えていたからです。
では、アルゼンチンが揃えた3つの要素は具体的にどのようなものだったのか?
守備、攻撃、トランジション(攻守の切り替え)の3つの視点で見ていきましょう。
アルゼンチン勝因①:強固な守備を築くことができた
まずアルゼンチン優勝についてのレアルマドリード監督アンチェロッティのコメントを見ましょう。
別に目新しいことをしたわけじゃない。彼は選手たちを然るべきポジションに置き、良質な守備組織を構築した。そこからアルバレス、ディ・マリア、そしてメッシのタレントを生かしたということだね
https://news.yahoo.co.jp/articles/61af4751ad6117dfe4a8a7138951ca0fd021f746 Yahooニュース 12/20(火) 7:20配信
アンチェロッティ監督が言うように、アルゼンチンは誰もが驚くべき戦術を用いたわけではありません。
アルゼンチンが行ったことはシンプル。メッシを活かすために必要な選手を集め、メッシを活かす戦術を実行しただけです。
これまでのアルゼンチンは、メッシを活かせる選手があまりおらず、チームとしてまったく動けていませんでした。
現監督のスカローニがまずやったことは、メッシの守備免除を許しても守り切ることができる守備を築くことです。
では、選手の能力、戦術、運の順に見ていきましょう。
選手の能力:優れた走力とボール奪取力
まず守備面でのアルゼンチンの強みは、フィジカルを活かしたボール奪取力です。
これは南米特有の強みであり、身体能力の高さと闘争心を活かした強みです。
例えば、以下のプレーはアルゼンチンのボール奪取能力の高さを表しているプレーです。
ワールドカップ予選ブラジル戦での1プレー。右サイドからの組み立てから、中央を狙うブラジル。
スペースが空いた中央に縦パスを入れるブラジルに対して、しっかり潰しに行くアルゼンチン。
ブラジルFWがボールを保持しようとするのを上回って、ボールを弾き出すアルゼンチン。
最強ブラジル相手にしっかりボールを奪取できました。
以上のように、アルゼンチンのボール奪取能力の高さは、今大会随一のものでした。
また、メッシの守備を肩代わりするために、他の選手が走りまくっていたことも素晴らしかったです。
メッシを攻撃に専念させるために守備は完全に免除されていますが、それがアルゼンチンの守備の穴になっていました。
しかし今大会は違いましたね。試合を通じて、アルゼンチンに守備の穴があると感じる機会があまりなかったです。
それはやはりメッシ以外の選手、特にFWアルバレスとMFデパウルの走力は凄まじかったからでしょう。
例えば、以下のプレーはアルゼンチンの凄まじい走力を象徴するプレーです。
ベスト16オーストラリア戦の2点目を奪ったシーン。メッシは動かず、代わりにプレスに行くデパウルとアルバレス。
一般的に考えた場合は水色丸の位置にメッシたちがいるはずですが、メッシの代わりに他の選手はかなり走ります。
プレスから逃げるオーストラリアはGKにパスを出します。この時、アルゼンチンはどうするのかというと・・・
デパウルがそのままGKにプレス。脅威的な走力でオーストラリアを追い詰めます。一方でメッシは動きません。
オーストラリアGKが逃げようとしますが、逆サイドからダッシュでプレスに来ていたアルバレスがボール奪取を狙います。
ボールを奪ってシュート。
脅威的な走力を活かして、貴重な2点目を奪ったアルゼンチン。
優れた走力とボール奪取力という選手の能力を持っていたことで、強固な守備の土台を作れていましたね。
そんな優れた走力とボール奪取力を活かした戦術も素晴らしかったですね。では見ていきましょう。
優れた戦術:エリア内でのシュートを許さない守備
NHKでの放送で解説者の方が言ってましたが、アルゼンチンは今大会で一番「エリア内でシュートを打たさないチーム」でした。
被エリア内 シュート | アルゼンチン | フランス |
GS1 | 3 | 2 |
GS2 | 1 | 5 |
GS3 | 2 | 2 |
ベスト16 | 3 | 8 |
ベスト8 | 3 | 6 |
ベスト4 | 6 | 8 |
合計 | 18 | 31 |
6試合やって脅威の18本。1試合平均3本しか、相手にエリア内でシュートを打たせてません。
初戦はまさかの敗戦でしたが、守備の内容としては優れており、難しいゴールを2本決められるという不運だっただけです。
他の試合でもほとんど決定機を作らせず、メッシの守備免除がありながらも非常に強固な守備をしていましたね。
そんなアルゼンチンの守備戦術は、組み立てから完全に阻害するのではなく、要所をきっちり締めるものでした。
メッシが守備免除されているので、相手DFやボランチなどが行う組み立てを阻害するのは難しい。
そこはしっかり割り切って、危ない場面の数歩手前でしっかりと相手を潰す守備戦術を行ってましたね。
決勝戦では、フランスの強みであるサイド攻撃を、自慢の走力を活かした戦術で弱体化させていました。
パーフェクトな内容だった前半から、13分ごろのプレーを見ていきましょう。
まずFWアルバレスが低い位置で中盤を助ける守備。そしてディマリアがフランスDFにプレスに行きます。
ただ、ディマリアが空けたスペースを狙ったグリーズマンにボールを渡り、右サイドで数的不利になりますが・・・
しかし、自慢の走力を活かして素早く戻ってくるディマリア。良いディフェンスです。
続いて、MFアレクシスがグリーズマンに引っ張られて空いた中央をデンベレが狙います。
ここでも自慢の走力を活かして、エンソとアレクシスが潰しいきました。
ただ、デンベレのドリブル能力がアルゼンチンのボール奪取力を上回り、中央突破を許し危険な状況。
しかし、逆サイドからデパウルが脅威的な走力で中央の守備に参加。危険なスペースをしっかりカバーします。
フランスも黙っちゃいません。デパウルが移動したことで空いた左サイドに展開。数的不利+怪物エムバペの超危険な状況。
しかし、ここでもデパウルがダッシュでカバー!!どれだけ走るの!?
まだフランスも諦めません。エムバペがボールを持っている状況で、MFがエリア内に移動してきます。
狙いはエムバペ必殺の高速カウンターでの突破。FWジルーがいるためアルゼンチンCBは対応しづらい状況。
非常に危険な場面でしたが・・・
SBモリーナの素晴らしい予測で高速ワンツーを阻止。強力なフランス攻撃陣を寄せ付けない素晴らしい対応。
以上のように、選手の能力を最大限活かした優れた戦術を実行したことで、強固な守備を築いていました。
大きな運:土壇場で踏みとどまれる
優れたチーム同士の対決では、決定機をゼロにすることはほぼ不可能であり、相手がシュートを外す運を掴む必要があります。
ベスト8で敗退したブラジルは、最後の最後に運を掴めず、クロアチアに同点にされました。
カウンターからシュートを放つクロアチア。ただ、ブラジルCBが目の前にいるので、完全に有利な状況とはいえない。
シュートしたボールがブラジルCBマルキーニョスの足に当たり、軌道が大きく変わる。
不運にも、ブラジルGKアリソンがギリギリ触れないような軌道を描きながらゴールに吸い込まれるボール。
勝利目前で同点にされたブラジル。そして、PK戦が得意なクロアチアに敗れベスト8敗退。
以上のように、どんな強いチームでも、運を掴めなければ失点してしまいます。
では、アルゼンチンはどうだったでしょうか?
試合終了間際など、完全にフランスペースの状況でも、アルゼンチンには「逆転だけは許さない大きな運」がありましたね。
特に、延長後半アディショナルタイムにあったフランス決定機をGKマルティネスが止めたシーンはハイライト。
まさに神が降りたとしか思えないシーンでした。
フランスDFが裏にボールを蹴ります。
アルゼンチンがクリアしようとしますが・・・
ここで痛恨のクリアミス。正直、「マジで終わった」と見ていて思いました。
ドフリー+いい位置でフランスFWがシュートを打てるヤバい状況でしたが・・・
奇跡的にGKマルティネスの足に当たりゴールを阻止!!
しかし、こぼれ球がフランスに流れると、GKも出てしまっているので、失点は免れない。
ただ、神様はアルゼンチンに微笑みました。
幸運にもこぼれ球はアルゼンチンのもとに転がり、悪夢を脱するアルゼンチン。
以上のように、完全に不利な状況でもゴールにならない方向にボールが飛んでいく大きな運を掴んでいました。
以上のように、選手の能力、優れた戦術、大きな運によって強固な守備を築けていたことが、アルゼンチンの勝因の1つです。
本当にサッカーって不思議なスポーツだな〜。
アルゼンチン勝因②:メッシの才能を発揮できた
再びアンチェロッティの言葉を見ましょう。
別に目新しいことをしたわけじゃない。彼は選手たちを然るべきポジションに置き、良質な守備組織を構築した。そこからアルバレス、ディ・マリア、そしてメッシのタレントを生かしたということだね
https://news.yahoo.co.jp/articles/61af4751ad6117dfe4a8a7138951ca0fd021f746 Yahooニュース 12/20(火) 7:20配信
これまでのアルゼンチンは、文字通り「メッシ頼み」のチーム。
とりあえずどんな形でもいいからメッシにボールを渡す。あとは「メッシさん頼みます」戦法。
それが原因で、メッシさえ潰せばアルゼンチンはまったく攻撃できないチームになっていましたね。
ただ、今大会は「メッシ頼み」から「メッシを活かす」チームに変貌。
スカローニ監督は、アルゼンチンをチームとして機能させた上で、メッシを活かすチームにしましたね。
では、選手の能力、戦術、運の順に見ていきましょう。
選手の能力:最高の選手メッシ
まずアルゼンチンには史上最高の選手であるメッシがおり、攻撃に関するすべてのプレーをハイレベルで行えます。
例えば、2021年の南米選手権でのスタッツは、メッシのすごさを表しています。
以上のように、攻撃における主要スタッツすべてにおいて1位だったメッシ。
言い換えれば、ゴールを奪うために必要なプレー全てをハイレベルで行える選手といえます。
メッシの能力を発揮できれば得点の可能性は飛躍的に上がるので、メッシを活かすのがアルゼンチン最大のミッションでした。
これまでのアルゼンチンと違い、メッシの過度な負担を減らし、よりゴールに近いプレーを増やすこと。
スカローニ監督は、組み立ての改善とカウンターによって、メッシの才能を最大限発揮させていましたね。
アルゼンチンの攻撃戦術を見ていきましょう。
優れた戦術:優れた組み立てとカウンター
メッシの才能を活かすために、まずアルゼンチンは組み立てを整備しました。
以前のアルゼンチンは、メッシが組み立ても担当し、低い位置にメッシが降りてくるのが常でした。
ゴール前から姿を消したメッシ。それによって、アルゼンチンは得点を奪う機会を作るのに非常に苦労していました。
この問題に対して、スカローニ監督は素晴らしい答えを出しました。
決勝戦での先制点のもとになったPKは、組み立てを改善したことの結果が出た瞬間でした。
まずフランスMFを引き出すアルゼンチン。
逆サイドに展開し、フランスFWを引き出しスペース創出。
フランスFWのプレスをうまく抜け、前進するアルゼンチン。
続いて、メッシを囮役として活用し、先ほど作ったスペースを使ってフランスMFラインも突破。
後手に回るフランス。アルゼンチンは組み立てで得たアドバンテージを利用し、サイドにいるディマリアに展開。
世界屈指のドリブル能力を誇るディマリアが抜き去りチャンス。
エリア内に侵入したディマリアをフランスFWが倒してしまい、先制点となるPKを獲得。
以上のように、組み立てに優れた選手を揃え、メッシ抜きでも前線までボールを運べるプレーができるようになりました。
これによって、メッシがより高い位置でプレーができ、得点の可能性を大幅に上げることに成功。
スカローニ監督の大きな功績の1つでしょうね。
また、トランジションを制することで(後述)、メッシ起点の優れたカウンターを決めることができていました。
先ほど説明したアルゼンチンの脅威的なボール奪取力と走力は、メッシを活かすためにも役立ちました。
決勝戦での2点目は、アルゼンチンの狙い通りだったでしょう。
セカンドボールを回収後、素早くカウンターに移るアルゼンチン。
ダイレクトパスでメッシに繋ぐ。フランスに囲まれるメッシですが・・・
この程度の守備は意に介さず、FWアルバレスに展開。そして、MFアレクシスが裏に全力ダッシュ!!
アルバレスがダイレクトで裏にスルーパス。
アレクシスにボールが通る。そして、逆サイドのディマリアが絶妙なタイミングで走り込んできます。
完璧なパス。
貴重な追加点。お手本のようなカウンターでしたね。
以上のように、ポゼッションでもカウンターでもメッシを活かせていたので、得点の確率を上げることができていました。
大きな運:必要な時に必要なゴールを奪えた
勝利するにはゴールを決めなければいけませんが、ゴールが入らない時は不思議なくらい入らないのがサッカーです。
クロアチアに負けたブラジル。
フランスに負けたイングランドとモロッコ。
どのチームも優れていて、多くのゴールチャンスを作っていました。
しかし、最後の最後でゴールを奪えず敗退しました。
これがサッカーの残酷な部分であり、内容と結果が比例しないサッカー界の七不思議の1つです。
では、優勝したアルゼンチンはどうだったか?
まずアルゼンチンは主導権を握っていた時間帯に、十分な得点を奪えていました。
決勝戦では、最初の75分間はアルゼンチンが主導権を握ってましたが、その時間帯に2点奪えました。
これが1点止まりだった場合、抜群の決定力を誇るフランスに逆転される可能性は極めて高かったでしょう。
後半残り15分、完全にフランスペースの中で逆転されなかったのは、最初の75分で2得点したからです。
15分の間に1−0からの逆転することと2−0からの逆転することの難易度は天と地の差です。
あの75分間での2得点は、本当にアルゼンチンを救った2得点でしたね。
また、試合の重要な場面でも得点を奪えていました。
決勝戦では土壇場で2−2の同点にされ、フランスのペースに傾いていました。
延長に入りアルゼンチンが少し盛り返していましたが、誰しもが「やっぱりフランスが勝つのか?」と頭によぎったはず。
前回大会では、ベスト16フランス戦で、最後の最後に4点目を奪われ3−4で敗北。
嫌な記憶が蘇りました。
しかし、今大会のアルゼンチンは大きな運を掴んでいましたね。
フランス優勢の中で、延長後半3分ごろにメッシが得点を奪い3−2。見事に勝ち越し弾を奪いました。
正直、本当に神が降りたと思いましたね。優勝に導かれていると思いました。
のちに同点にされますが、あの1点がなければPK戦まで持ち込めていなかった可能性は高いでしょう。
以上のように、大会を通じて、必要な時に必要なゴールを奪える大きな運を掴めていたことも、アルゼンチンの勝因の1つです。
君は引力(運命)を信じるか?
※ジョジョのDIOのモノマネ。
アルゼンチン勝因③:トランジションを制した
現代サッカーでは、トランジション(攻守の切り替え)の質が極めて重要です。
近年世界に衝撃を与えたクロップ監督率いるリバプール。
今大会躍進したクロアチアとモロッコ。
近年結果を残しているチームの多くが、優れたトランジションを武器にしているチームです。
試合を制するにはトランジションを制する必要があり、アルゼンチンはその点でも素晴らしかったです。
では、1つずつ見ていきましょう。
選手の能力:素晴らしい切り替えの速さ
まずトランジションの質を左右するのは、各選手の切り替えの速さです。
サッカーがカオスである以上、トランジションが発生するタイミングは中々完璧に読めません。
そこで大事になるのが、トランジションが発生した瞬間に、相手よりもコンマ数秒速くボールに向かっていくことです。
いくら素晴らしいボール奪取力や戦術を持っていても、反応が遅ければ相手にボールを奪われます。
アルゼンチンの各選手は恐ろしいくらい出足が速く、ほとんどの場面でフランスより速くボールを奪いに行けていました。
2点目の起点となったボール奪取も、アルゼンチンの切り替えの速さが活きた結果です。
フランスの攻撃を防ぎ、クリアをするアルゼンチンGK。FWアルバレスはダッシュでプレスに向かいます。
見事なプレスでサイドに追い込むアルバレス。そして、デパウルが縦のパスコースをダッシュで潰しにいきます。
完全にパスコースがなくなったので、ロングボールで逃げるフランスDF。
しかし、すでにロングボールが飛んできそうなエリアに移動していたアルゼンチンDF。一方でフランスはまだエリア内に・・・
これが先ほど紹介した2点目のカウンターにつながりました。
以上のように、非常に速いトランジションによって、ほとんどのトランジションを支配できていたアルゼンチンでした。
優れた戦術:走力を活かしたボール奪取とカウンター
トランジションを制するには、ボール付近の人数と各選手のポジショニングも重要です。
人数が少なければ、ボールが転がってくるエリアをしっかりケアできません。
ポジショニングが悪い場合も、ボールが転がってくるエリアをしっかりケアできません。
アルゼンチンは、優れた走力を活かして人数を集め、優れたポジショニングでボールを奪えていましたね。
また2点目の起点となったトランジションを振り返りましょう。
まずアルバレスとデパウルの素晴らしい走力によって、セカンドボール回収のために必要な人数を揃えました。
そして、フランスが蹴ったロングボールを回収しやすい位置に素早く移動していたアルゼンチンDF。
また、ボールを奪った後のカウンターでも、各選手の優れた走力が活かせていましたね。
もう一度お手本のようなカウンターを見ていきましょう。
休まずダッシュするアレクシス。
マジで100mくらい走っていたアレクシス。そして、アレクシスの頑張りに応えて、ディマリアも長い距離を走ってきます。
選手の能力を見事に活かした素晴らしいカウンター。
以上のように、優れた走力を活かしたボール奪取とカウンターで、アルゼンチンはトランジションを制していました。
大きな運:ボールがアルゼンチン選手に転がってくる
サッカーでは、おもしろいくらいボールが転がってくる時と、まったく転がってこない時があります。
ボールが転がってくるかは、試合の流れに大きく関係している印象です。
アルゼンチンペースだった最初の75分間は、おもしろいくらいアルゼンチン側にボールが転がってきていました。
しかし、フランスペースだった75分〜90分間はフランス側にボールが転がり、結果として2得点を奪っています。
ただ、一番大事な場面ではアルゼンチン側にボールが転がっていた印象。
アルゼンチンにボールが転がってくる運が向いていることを表す象徴的なシーンは、アルゼンチンが3点目を奪った場面。
フランスのロングフィードをアルゼンチンがクリアした場面。ボールが誰もいないところに転がり、両チームが取りにいきます。
この時点ではどちらも回収できず、ちょうどフランスとアルゼンチン選手の間をボールが転がっていきます。
しかしどちらも反応できず、そのまま転がっていったボール。そして・・・
どういうわけかアルゼンチンMFのもとにボールがたどり着き、そこから3点目が生まれます。
サイドに展開。
前線にロングボールを供給。
ダイレクトでメッシに落とし、ここから高速アタック。
すべてダイレクトでパスし、エリア内に侵入。
FWラウタロのシュートはGKに弾かれますが・・・
こぼれ球はメッシのもとにいきシュート!!
貴重な3点目を奪いました。
選手の能力を優れた戦術で活かした上で、運まで掴んでいたアルゼンチンは、トランジションを制することができました。
日本が優勝するには何をするべき?
歴史的な一戦となったアルゼンチン対フランス。
サッカーのすべてが詰まっていたと言っても過言ではないですね。
個人、チーム、メンタル、運など、カオスなスポーツであるサッカーで勝利するためには何が必要なのかを感じさせてくれました。
この歴史的な決勝戦から、日本が優勝に向けてやるべきことは何でしょうか?
A代表、育成、Jリーグの3つの視点から考えてみましょう。
A代表に関して
まずA代表がやるべきことは、以下の4つです。
- ヨーロッパや南米メインで親善試合をする
- 国内の親善試合でJリーグ選抜を鍛える
- どんなプレースタイルもある程度できるようにする
- 豊富な経験がある外国人監督を招聘する
現在サッカー界では、ほとんどの優れた選手はヨーロッパのクラブチームにおり、日本代表も同じです。
そして、どのクラブチームも過密日程であり、特に強豪クラブはとてつもなく過酷な日程でプレーしています。
なので、どんな代表チームもあまり移動に時間がかからない国で親善試合をすることを望んでいます。
しかし、日本代表は国内で親善試合をしようとしすぎて、ヨーロッパや南米の強豪と試合をする機会に恵まれてません。
W杯で勝ち抜くためには強豪との試合を増やすべきであり、やはりヨーロッパや南米で試合をすることをもっと許容するべきです。
日本のA代表の選手たちがヨーロッパのクラブでプレーするようになっている現在では、それはより可能になってるはずです。
ぜひヨーロッパや南米での親善試合をメインにしてほしいですね。
ただ、国内でプレーする選手たちの成長も不可欠。
なので、A代表をヨーロッパ組と国内組に分け、国内組はアジアの強豪やヨーロッパ・南米の中堅と試合を国内でしてほしいです。
ヨーロッパ組の経験を増やしながら、国内組の力を徐々に強化する。そして、国内組で優れた選手はヨーロッパ組に呼ぶ。
このような流れを生み出して、選手の能力と経験を効率的に伸ばしていってほしいと思います。
続いて、プレースタイルについてもやるべきことがあります。
何かと「日本らしいサッカーの追求」を叫んでいますが、強豪国はどんなプレーもある程度できることを忘れてはいけません。
決勝に進んだアルゼンチンとフランスは、ポゼッションでもカウンターでも、前プレでも引いた守備でも、状況に応じてできます。
もちろん得意不得意はありますが、一定レベル以上のプレーを展開できるのです。
強豪国が持つプレースタイルは、すべてのプレーの中で最もレベルが高いプレーなだけで、それ以外ができないわけではないです。
「日本らしいサッカー」を展開できるようになるには、まずすべてのプレーをある程度のレベルで展開できることが前提でしょう。
では、すべてのプレーをある程度のレベルで展開できるようにするためにはどうすればいいか?
それは、経験豊富な外国人監督を招聘することです。
国内の監督でダメな理由は、選手に求めるレベルが低くなってしまうからです。
国内の監督は、日頃から海外トップレベルのプレーを実感する機会がほとんどありません。
そのような監督が代表選手たちに求めるプレーは、海外トップレベルから離れてしまうのは必然。
すべてのプレーをある程度のレベルで展開できるようになるには、海外トップレベルのプレーを知っている監督だけです。
そういった監督を連れてくることで、すべてのプレーでレベルが上がり、どんなプレーをある程度できるようになるのです。
そうすれば、おのずとチームの力は向上し、ベスト8やベスト4を狙えるチームになるでしょう。
ただ、次期監督は森保監督に決まりそうなので、うまくいくか不安です。
まあ、うまくいくことを願うしかありませんかね・・・。
育成に関して
育成に関してやるべきことは、以下の3つです。
- 才能を見逃さない仕組みを作る
- 才能を育てる環境を整える
- 早めにヨーロッパに渡る
アルゼンチン勝因の解説でいいましたが、すべてのプレーの質は選手の能力に依存します。
言い換えれば、優れたプレーを生み出すためには、その選手に優れた才能がなければいけません。
なので、最初にやるべきことは、才能を持つ選手を見逃さないことです。
また、見つけた才能を磨くための環境も非常に大事です。
才能を見つけ、才能を磨くシステムが日本にあるのか?答えはNOですね。
正直、多くの選手を潰している部活というシステムを潰した方がいいと思ってます。
無意味に長距離を走らせる。
戦術的な練習をほとんどしない。
体罰や言葉の暴力。
そして、毎日のように長時間練習する。
本当に悪い部分ばかりであり、より悪いのはそうしたことを改善しようとしない状況です。
なぜ育成大国ひしめくヨーロッパから何も学ばないのか?
なぜ日本独自のシステムを無意味に続けているのか?
まったく理解できない現状ですね。
ヨーロッパの育成システムを取り入れれば、おのずと良い選手たちがもっと出てくるはずです。
もっと選手を大切にしてほしいです。それがすべての始まりなんですから。
ヨーロッパの育成システムを取り入れた後、もう1つやってほしいのは、有望な選手をヨーロッパに行かせることです。
これは近年躍進を遂げたベルギーに習った方法です。
ベルギーは育成環境がそこまで整っていないため、有望な選手たちを若い時にフランスなどの育成大国に移住させています。
これによって、日頃から選手たちが高いレベルで練習や試合をでき、おのずと世界トップレベルに近づくことができます。
日本もベルギーに習って、有望な選手たちを早めにヨーロッパに移住させてほしいですね。
もちろん小学生の頃から語学の勉強をさせる必要があります。語学の壁は大きいですから。
また、親御さんのサポートも充実させるべき。
早期のヨーロッパ移住を実現すために、選手とその親御さん両方をしっかりサポートできる環境を整えてほしいですね。
Jリーグに関して
最後にJリーグがやるべきことは、以下の2つです。
- 守備にもっと力を入れる
- 批判をしても許される環境
まずJリーグに優れた守備を行うチームはないと思ってます。
ボールを持っている水色チーム。
左サイドに展開。この時点では赤チームは当たりに行くそぶりを見せない。
まあ、引いた守備を選択したのかな?
と思いきや、水色選手にボールが渡る瞬間に、赤選手が急にプレスに行きます。
判断が遅すぎでしょ。遅すぎて意味がない。
ここで本当に意味のわからないプレー。もともと中央にいる水色選手をマークしていた赤選手がどこかに行きます。
その結果、中央の水色選手が思いっきりフリーになる。
フリーになっているので、他の赤選手が当たりに行きます。
本当に何を守っているのか、あの赤選手は?
プレスに行きましたが、サイドにボールが流れて水色ボールのまま。
ここで不思議なのは、赤く囲った小さなエリアに赤選手7人いることです。こんな密集する意味は?
密集していることを利用され、手薄になったDFラインの裏を狙ってパス。ただ、CBがダッシュで戻れば攻撃を防げる状況。
しかし、赤CBはチンタラ戻ってしまう。「シュートを打たしてもいいよ」と教育されてるの?
まんまと強烈なシュートを決められる。しかも、同点の状況で。
以上のように、大きな守備のミスが起こっているのに最優秀ゴール賞にノミネートされているのが現状です。
ただ、サッカーではミスは起きるものですし、ヨーロッパでも上のようなことはたまに起こります。
Jリーグの何が問題かというと、こういった現状を改善しようとせず、守備に力を入れるチームが皆無なことです。
守備はサッカーの基本ですし、アルゼンチンの勝因も強固な守備でした。
守備の強化は試合に勝利するために不可欠であり、スペインのようなポゼッション主体チームも守備の強化を行なっています。
しかし、Jリーグの各チームは、本当に攻撃ばかりに着目しています。
簡単に失点している現状を改善しようとせず、もっとゴールを奪うことのみを考えているように思えます。
これではいくら頑張っても試合に勝てないでしょう。守備というサッカーの基本を無視しているのですから。
守備を重視するにはどうすればいいのか?
なぜ守備を重視しないのか?
いろんな原因はあるかもしれませんが、1つは「批判を許さない環境」でしょう。
先ほど紹介した「大きな守備のミスがあるのにベストゴール認定されたプレー」にも、批判を許さない環境が表れています。
たまにJリーグの試合を見るのですが、解説の方が気持ち悪いくらい「ポジティブな意見」ばかりいいます。
批判的な意見をいうと怒られるんでしょうか?
ダメなプレーはダメと言わないと、試合を見ている方々のレベルも上がらず、誰も良いプレーかどうかを判断できません。
プレーする側だけでなく、見る側のレベルの向上も、その国のサッカーのレベルを上げる要因です。
ぜひとも、批判を許す環境を作ってほしいですね。
まとめ
今回はアルゼンチン強さの秘密を解説しました。
最後にアルゼンチンの勝因を振り返りましょう。
アルゼンチンの勝因 ・メッシを活かせる選手が揃った ・チームとして機能するための優れた戦術 ・優勝に不可欠な運を掴んだ
まずは本当に必要な選手たちが揃ったといえる。
チームとは優れた選手をただ集めればいいわけじゃない。パズルのピースのように、お互いが補完し合う関係でないといけない。
これまでのアルゼンチンは、まったく補完関係でなかったと思う。
今回は補完関係になる選手たちが奇跡的に揃った。本当に奇跡。
また、スカローニ監督やコーチ陣が本当にうまくチームとして機能させてくれたと思う。
「戦術とは選手の相互関係」という基本を見事に体現していた。
最後に、何といっても何度も奇跡的なプレーが起こったと思う。
メキシコ戦のメッシのゴール。
オーストラリア戦やフランス戦でのスーパーセーブ。
フランス戦での3点目。
アルゼンチンが優勝に導かれているように思えてならなかった。
今回のW杯を見て、改めて「サッカーは予測不可能だからおもしろいんだな」と実感。
これからもサッカーを全身全霊で楽しみたい。
これまで書いたW杯関連の記事のリンクを一部載せておきます。お時間があればお読みください。
・ブラジル対クロアチア
ブラジルの衝撃的敗戦を振り返っています。
・アルゼンチン対メキシコ
まさかの初戦敗北からの復活した理由を解説しています。
・日本対ドイツ
日本がドイツに勝利できた理由を解説しています。
楽しい楽しいW杯は終わりましたが、ヨーロッパの各リーグは再開しています。
サッカー好きの楽しみは年をまたいでも終わりませんよ!!
サッカーはみなさんの人生をより楽しいものにしてくれる存在です。
ぜひ一緒に楽しみましょう!!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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