【クロースなき現状】見えないバランスと2人の王
チームの中心であったクロースが抜けた今季。攻守両面で苦しんでいるのが毎試合見て取れます。
やはりチームの心臓が抜けることは、チームにとって非常に重大なことですね。
スター集団がこれだけ苦戦するとは、誰も思わなかったでしょう。
アンチェロッティ監督は深刻ではないと言っていますが、個人的には「今季全部使っても解決しないのでは?」と思っています。
それでは、レアルマドリードの問題の根深さを1つずつ解説していきますね。
バランスこそレアルの生命線
ここ10年間を見ても最も成功しているクラブの1つであるレアルマドリードは現代サッカーらしくないチームです。
FW陣も例外なくプレスに参加し、ハイインテンシティの守備をするという現代らしい守備はあまりない。
システマチックな組み立てとチャンスメイクを土台に攻撃を仕掛けることもあまりない。
要所を締める守備と優れた才能に委ねた攻撃で試合を流れを掴むのがレアル。そして、その要となるのがチーム全体の完璧なバランスです。
CL優勝時のメンバーを見ても、優勝を運命づけられているようなメンバーが集まっていました。
チームの危機をスーパーセーブで救い続ける最高のGK。
全幅の信頼をおける世界最高レベルのCBコンビ。
攻守両面で仕事をきっちり完遂できるSB。
潰し屋、ゲームメイク、チャンスメイクのMF3大要素を完璧にこなす中盤トリオ。
圧倒的破壊力で一瞬の隙を逃さない強力な3トップ。
勝利を得るために必要な要素をすべて兼ね備えており、どんな相手も薙ぎ倒せたのは上記のようなバランスがあったからです。
なかなか見えない今季のバランス
では、今季のバランスはどうかというと、「まったくない」と言っていい。
特定のスペースに偏ってしまう攻撃と安定しない組み立て。
選手同士の動きが噛み合わずにコンパクトさを保てない守備。
攻守両面で大きな問題を抱えており、毎試合のように苦戦していますね。
そして、もっと問題なのは「今いるメンバーでバランスを確立できそうにない」という点です。
GKやDFは相変わらず素晴らしいですが、問題はMFとFW。
MFに関しては、クロースが抜けたことでゲームメイクできる選手がいなくなった。
ベリンガムやモドリッチはチャンスメイクに特徴がある選手であり、バルベルデもどちらかといえばこっち側。
チュアメニはバランサーであり、ゲームメイクやチャンスメイクできる選手の相方として機能する選手。
また、カゼミーロのような潰し屋になれる選手もいないので、チーム全体の守備力を補う選手もいない。
FW陣に関しては、ヴィニシウスとエムバペの得意なスペースが左サイドと、主戦場が完全に被っている。
バランスを取るためにロドリゴが右サイドで頑張ってますが、ロドリゴも左サイドが主戦場なのでそこまで機能していない。
ゲームをコントロールするための要素に欠け、ゴールを決めるための要素も欠けている。それが今のレアルの現状です。
やはり”2人の王”は機能しないのか?
かつてクライフは言いました。「2人の王様はチームで共存できない」と。
先ほどから述べているように、レアルにとってバランスはとても重要であり、役割が被ることはバランスを壊すことにつながります。
かつてのイングランド代表におけるジェラード・ランパード問題のように、同じ特性の選手はプレーが被り、動きがぎこちなくなる。
今季のレアルではエムバペとヴィニシウスという2人の王様がおり、今のところクライフの言葉通りの問題を抱えています。
先ほど述べたように、両選手はどちらも主戦場が左サイドであり、攻撃停滞の大きな要因になっている。
そして、どちらも試合を決めるタイプの選手であり、ゴールチャンスの場面での連携においてもぎこちなさが拭いきれない。
どっちがチャンスを作り、どっちがゴールを決めるのか?役割分担が完璧にできない限り解決しない問題です。
この大きな問題を解決するには、バルセロナのMSNのように、やはり「王様を1人すること」しかないのではと感じます。
メッシとスアレス、そしてネイマールはそれぞれチームのエースとなれる選手。
その3人が揃った当時のバルセロナでもクライフの言葉は取り上げられてました。
しかし、スアレスとネイマールはメッシの実力を認め、どちらもメッシを尊重することを決断。
結果として、メッシを王様とするチームになり、見事3冠を達成しました。
クライフの言葉通りになるのか?それとも覆すのか?チームバランスを見つける旅は長くなるでしょう。
終盤戦に向けて解決するべき課題
ここでは、現状多くの問題を抱えるレアルが、特に解決するべきだと思う課題を書いていきます。
毎試合なんとか踏ん張って勝ち点の取りこぼしが少ないレアルですが、不安が多いのは事実。
重要な問題をしっかり解決していかないと無冠の可能性もある(UEFAスーパーカップは取りましたが個人的には除きたい)。
何よりも個人的にはまずはバランスをどうにかするべきだと思う。なのでバランスに関係する問題を取り上げます。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
課題1:合わないプレスのタイミング
1つ目の課題は「合わないプレスのタイミング」です。守備のバランスを崩壊させている大きな原因。
プレスを成功させるために重要なのは選手の連動であり、それぞれのプレスのタイミングが合わなければ相手にスペースを与えることになる。
各チームいろんなやり方でプレスをしていますが、うまくいっているチームはやり方は違えどタイミングがズレることはない。
一方、現在のレアルはFW陣のプレスが自由すぎて、MFやDFのプレスが後手になることが非常に多いです。
よく見られるシーンは、ある程度守備が免除されているヴィニシウスかエムバペが急にプレスをし始めて、MFのプレスが大幅に遅れる。
結果的に中盤に大きなスペースを与え、何度も攻撃の起点を作られてDFが手を焼いていますね。
また、MF同士のプレスも噛み合ってないこともしばしば。誰がどのようにどこを守るのかが見て取れない場面が多々ある。
FW陣に献身的な守備を求めるのが正解とは思えませんが、MFを混乱させるような守備はしないようにしないと、コンパクトな守備を作ることは不可能。
課題2:前プレ or ブロック?
2つ目の課題は、「前プレ or ブロック?」です。チーム全体としてどのような守備をしたいのかが伝わってきません。
どんなチームも前プレとブロックを使い分けて守備しています。
ただ、重要なのは適切なタイミングで使い分けることであり、前プレが成功しないときに前プレをしてもダメ。
これもよく見られるシーンですが、共通理解がまだないのか、前プレ組とブロック組でチームが分かれてしまう場面があります。
トランジション時や相手のポゼッション時。ボールを取りに行くのか、もしくは待ち構えるのかを決める必要がありますが曖昧です。
いかに共通理解を作り上げるのか?アンチェロッティの手腕に注目したい。
課題3:集中力の欠如
課題3つ目は「集中力の欠如」です。
90分という長い時間戦うサッカー。不調な時は集中力が切れやすいですが勝利するためには途切れてはいけません。
現在のレアルの試合を見ると、不利な状況や時間の経過とともに集中力が切れたようなプレーが増えます。
せっかく効果的なカウンターを決めれそうな場面で、パスを受ける準備を怠りパスカットされる。
せっかく連動してプレスをすればボールを奪えそうなのに、ボーッと突っ立っている。
勝利を得るためにもっと貪欲にプレーしてほしいですね。
課題4:試合をコントロールできない
課題4つ目は「試合をコントロールできない」です。どのようにボールを握って前線に届けるのかが不明瞭。
クロースがチームの手綱を握っていた昨季。見事なゲームコントロールでチームを正しい方向に導いていました。
クロースがいなくなった今季はいまだゲームをコントロールする方法をまったく見つけられていない。
選手たちの特性上、個人に委ねるのは不可能に思える。ただ、選手間の連携を駆使するのも一筋縄ではいきません。
MF陣のゲームメイク力は高くない。そしてFW陣もそれを補助できるような力はまだない。
現状SBが中盤を補助しており一定の成果は感じられますが、あくまで補助でありメインでない。
ゲームメイクの中心となるMF陣の成長が不可欠ですが、成長はそんな急に起こるものではないのでなかなか長期化しそうな問題ですね。
課題5:中央を使えない攻撃
課題5つ目は、「中央を使えない攻撃」です。左サイドが機能しない理由でもありますね。
攻撃を成功させるには、ピッチを最大限使って、相手に的を絞らせないようにしないといけません。
特に、中央からの攻撃がうまくいけば、相手を中央に誘導でき、結果的に両サイドからの攻撃も機能します。
現在のレアルでは、中央でチャンスメイクできる選手はいるのですが、どのように活用するのかがまったく決まってない印象です。
バランスが悪く組み立てがうまくいっていないことも大きな原因ですが、スペースの創出と活用がスムーズでない。
チャンスメイクに関しては選手が揃っているだけに歯痒い状況。
1番の問題はスペースを作るプレー。クロース不在により相手守備を動かすプレーが効果的でなくなっていますね。
課題6:形にならない左サイド
最後に、課題6つ目は「形にならない左サイド」です。中央からの攻撃がうまくいけば改善する可能性もありますが。
先ほど述べたように、エムバペとヴィニシウスの主戦場が被っているのが今のレアル。
お互いにうまく共有できればいいですが、現実はそう簡単ではなく、「2人の王様」問題によりまったく解決しそうにない。
また、2人の攻撃に周りの選手もうまく絡めていない。
そもそもスペースに選手が渋滞している中に追加でいろんな選手が来てもうまくいかないことは明白。
そして、何よりも全員の動きが乏しい。その場に止まっていることが多く、いろんなスペースを突く動きが多くない。
いろんな攻撃パターンを高精度でできるポテンシャルがあるだけにもったいない状況です。
個人的希望:今季の成否を決めるであろうもの
序盤戦は苦戦しているレアルですが、選手の能力から見れば大きなポテンシャルを秘めていることは明らかです。
ここでは、今季の成功のために「こうなってほしい」と個人的に期待していること述べていきます。
1つずつ見ていきましょう。
希望1:偽WGのヴィニシウス
希望1つ目は「偽WGのヴィニシウス」です。
「2人の王様」問題、中央からの攻撃、組み立ての改善と、前述の課題をすべて解決するための大きな要素がヴィニシウスのチャンスメイカー化だと思ってます。
まず「2人の王様」問題に関しては、エムバペの能力を考慮する必要がある。
稀代のフィニッシャーであるエムバペは、現状のプレーを見てもチャンスメイク側に回ることは得策ではなく、ゴールに集中させるべき。
また、エムバペが中央でのプレーに苦戦しているところを見ると、左サイドをもっと使ってほしいと感じる。
その一方、ヴィニシウスに関してはチャンスメイカーとしての素質が感じられるプレーが多々あり、ドリブル能力を見ても狭いスペースでもプレーできる。
だからこそ、左サイドを2人で共有して2人の破壊力を発揮しつつ、ヴィニシウスのチャンスメイクによって中央からの攻撃も改善してほしいですね。
そして、後述の「ボランチ像の確立」とともに組み立ての改善も担ってほしい。
MF陣がスペースを作った後、攻撃の起点となれる選手としてヴィニシウスが中央で躍動することを望む。
ヴィニシウスの偽WG化はチームにバランスをもたらし、攻撃陣の覚醒の根源となり得るでしょう!!
希望2:ボランチ像の確立
希望2つ目は「ボランチ像の確立」です。
現状ボランチはチュアメニとバルベルデがボランチ役をしていますが、いまだ役割が見えてきません。
能力的にチュアメニはバランスの調整役、バルベルデは推進力を活かしたチャンスメイク役。やはり現状では1人でレアルのボランチ役ができる選手ではないと感じる。
だからこそシステムでどうにかするしかない。相方となるベリンガムなどと共同でボランチ役を確立するべきです。
やはりキーになるのは選手たちの推進力。走れる選手たちが揃っているので、走力で相手の守備を混乱させたい。
チュアメニがボランチの場合は、他のMFが走力でスペース創出を図っているときにできるスペースの穴を埋め、ボールの逃げどころを作る役を担う(ブスケッツのように)。
バルベルデがボランチの場合は、他のMFと同様に走力でスペースを作り、ボランチのスペースは全員で埋め合う。
個人的にはチュアメニがボランチをする方が攻守両面で安定しやすいと思う。ただ、現状のプレーを見る限り、必要なタイミングで必要な場所にいないことが多い。
チュアメニの大きな成長を期待したい!!
ちなみに、個人的にはMF3枚はチュアメニ、バルベルデ、ベリンガムの3人。やっぱりバルベルデは前で使いたい。
また、最近の試合では増えてきてますが、SBがもっと中盤でプレーすることも必要。
そして、先述の偽WGヴィニシウスもうまく絡んでくることが大事です。
チーム全員でクロースの穴を埋める。アンチェロッティの発言通り、これこそチームの命運を左右します。
希望3:エムバペの復調
3つ目の希望は「エムバペの復調」です。言うまでもなく、現代最強のゴールゲッターが調子を取り戻せば自然とチームは軌道に乗る。
中央でのプレーに不慣れであり、ヴィニシウスとの左サイドでの問題もある。
もちろんチーム自体がうまく噛み合ってないこともエムバペに大きな影響を与えているでしょう。
しかし、裏を返せばチーム内の問題が解決していけばエムバペも伸び伸びプレーできるようになり、自然と復調するのではないかと思います。
実力はすでに証明済み。もし復調すれば圧倒的な武器となってレアルを牽引するでしょう。
CR7に憧れた怪物は、正当な後継者として歴史を刻むはずです!!
まとめ:【苦心】新生レアルマドリードの難局と希望 2024−25
今回は24−25序盤でのレアル・マドリードの特徴や課題を解説しました。
大方の予想通り、クロースが開けた穴は非常に大きかったですね。
ただやはり銀河系軍団。ポテンシャルは計り知れないものであり、噛み合えば文句なしの最強になり得る。
昨季CL王者の意地を見せられるのか?
今季も目を離せない存在、レアル・マドリードですね。
ちなみに、昨季のレアルマドリードがどのようなチームだったのかを知りたい方は以下の記事をお読みください。
・2024年2月ごろのレアルマドリード
・ドルトムントとのCL決勝
最後までお読みいただきありがとうございました。
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