【アトレティコ戦】90分間戦い切る力がないバルセロナ
まずは先日行われたアトレティコ戦を振り返りましょう。
劇的なゴールを決められて敗戦した試合の内容は、以下のシメオネの言葉に集約されています。
バルサのゴールが決まるまでは、彼らの方が圧倒的に優れていた。しかしその後、彼らのエネルギーが失われていくと気づいたんだ
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素晴らしいスタートを切りアトレティコを圧倒していた序盤から、最後は力尽きたかのように失点して終わり。
決定力不足は言うまでもないですが、アトレティコが今のバルサにうまく適応したからこその結果とも言えます。
では、前半後半それぞれ簡単に見ていきましょう。
【前半】ヤマル不在と分が悪かったサイド攻撃
前半は内容的にはバルサが圧倒していました。
シュートはバルサ側6本でアトレティコ側は0本。そして、ペドリの得点で1−0で終えることができました。
しかし、低いラインとクロスへの誘導というアトレティコの術中にハマり、1点しか奪えなかった前半ともいえます。
まず前半のアトレティコはCBやサイドへのプレスは強くなく、かなり自陣深い位置に引きこもっている印象でした。
緩いプレスのおかげでゆったりボールを持てたバルサは試合を支配しましたが、低いライン設定のせいで武器である裏抜けが機能しなかった。
裏抜けが機能しないので、中央突破かサイド攻略からチャンスを作りたいバルセロナ。しかし、そこもアトレティコは対処してきます。
ヤマル不在のためドリブル突破やカットインは期待できない。結果的にクロスが増えましたが、鉄壁のアトレティコDF陣を攻略するのは難しかった。
小柄な選手が揃うバルセロナの中でターゲットになれそうなのはレヴァンドフスキのみ。
大外へのクロスなど工夫は見られましたが、クロスから得点を奪うのはバルセロナには分が悪かったですね。
そして、最後の望みの綱である中央突破。ペドリとガビの神連携からの1得点はありましたが、コンスタントに攻めれていたわけではありません。
ヤマル不在の影響をしっかり活用したアトレティコ相手に1点止まりだったバルセロナは、後半になって苦しむことになりました。
【後半】強まるプレッシャーと疲弊したバルサ
後半、注目したいのはアトレティコがプレッシャーを強めたこと。
前半はバルサDFラインやサイドへのプレッシャーが弱く余裕を与えてしまっていたアトレティコですが、後半はバルセロナを休ませない。
CBやSB、そしてWGへのプレスを強め、バルセロナがパス回しを急かされる。
パス回しのテンポが上がることで発生する問題は、支配力低下とフィジカル勝負に持ち込まれることです。
支配力が低下すれば選手ひとりひとりの守備負担が増える。小柄な選手が揃うバルセロナの守備力が低下するのは必然です。
グリーズマンの動きや2、3列目からの飛び出し。走力と技術が融合した連携を見せるアトレティコ。
それに対して、バルセロナはついていけない場面が増える。そして1失点目を喫することに。
その後、試合は50−50の状況が続き、バルセロナの体力はだんだん削られていく。
そして、後半アディショナルタイム。不用意なボールロストからカウンターを喰らう。
ここまでの激しい試合展開が原因か、最後の最後でマークが間に合わず2失点。
バルサのゴールが決まるまでは、彼らの方が圧倒的に優れていた。しかしその後、彼らのエネルギーが失われていくと気づいたんだ
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シメオネの言う通り、エネルギーが失われてしまったバルセロナ。90分間戦え切れない現状を露呈した試合でした。
【今後の問題】カオスへの適応がまだまだなバルセロナ
この章では、現代サッカーにおいて、バルセロナに必ず付きまとう問題を解説していきます。
走力という新たな要素を追加したバルセロナ。序盤戦は圧倒的な攻撃力で無双状態でした。
しかし、11月からは相手の対策も進み苦戦する試合が増え、僅差ではありますがリーグ3位に落ちています。
バルセロナの何が問題なのか?個人的には「いまだバルサは現代サッカーに適応できていない」ことだと思っています。
それでは1つずつ解説していきます。
カオスに適応できなければ勝つことはできない
W杯を制覇したアルゼンチン。ユーロを制覇した新生スペイン代表。そして、CLを制覇したマンCやレアル。
上記のチームに共通することは、50−50の展開でも十分戦えるインテンシティと能力を持っているということです。
ポゼッション一辺倒。堅守速攻で90分間戦う。いずれも20年前は普通に見られた光景です。
しかし、現代サッカーにおいては、ゲーゲンプレスの浸透により「いかにカオスを制するか?」が重要になってます。
状況が不安定で何が起こるかわからないカオスな展開において、いかに的確にプレーできるかが今のサッカーでは最重要。
マンチェスターシティのCL制覇は、ポゼッション一辺倒からカオスへの適応へと進化を遂げたことが一番の要因だと思います。
優れたインテンシティと冷静で的確なプレーをカオスな状況でも発揮できるか?それが現代サッカーです。
明らかにインテンシティと能力が足りない陣容と戦術
では、いまのバルセロナはカオスに適応できるのか?個人的には陣容と戦術両方において力不足だと思います。
まずは陣容を見てみると、MF陣のインテンシティ不足とDF陣のリカバリー力の不足が問題。
現在、MFのスタメンはカサドとペドリ、そしてガビかオルモ。どの選手もフィジカルが弱みです。
そして、DF陣に関しては成長は見られますが、プレスやハイラインを抜けられた後の対処が良くない。
そして、上記の能力不足を補えるような戦術をやっているのかと言えばそうではない。もっと言えば、弱点が露呈するような戦術にも思えます。
個人的に問題だと思うのはSBの役割です。
SBのスタメンはバルデとクンデ。2人ともサイド攻略を担っていますね。
バルデは持ち前のドリブルでの攻撃。そして、クンデはヤマルとの連携で数多くのアシストを記録。攻撃面では成果が見られます。
しかし、SBがサイドに居続けることによって、中盤のインテンシティは不足したままで、SBが空けたスペースをCBたちがカバーしきれないという問題がある。
アトレティコ戦でもあったように、相手にボールが渡ると当然相手はその穴を狙ってきます。
カオスな状況が増える現代サッカーにおいては、上記の問題が露呈する場面は増える。
今のバルセロナは、陣容と戦術両面でカオスへの適応に必要なインテンシティと能力が足りていません。
ポジショナルプレーはバルセロナの生命線
不調に陥ったバルセロナ。こんなときだからこそ思い出さないといけないのは、「ポジショナルプレーこそバルセロナの生命線」だということ。
アトレティコ戦序盤を思い出してください。
優れたポゼッションでアトレティコを完全に押し込み、ネガティブトランジションはかなりの成功率を誇った。
アトレティコのカウンターを完璧に封じてシュートは衝撃の0本。
アトレティコをあれだけ圧倒できたのは、ポジショナルプレーが素晴らしく機能したことが要因です。
相手を守備に奔走させて押し込む。そして、優れたパス回しで相手を分断する。
そうすることで、相手がボール奪取に成功したとしても、もはやカウンターできる形を作りづらく、バルセロナのネガトラが機能しやすい。
「攻撃している時に守備を整える」。これができてこそ、小柄な選手が揃うバルセロナが試合に勝利できるのです。
アトレティコ戦後半のようにプレスによってパス回しを急かされた場合、簡単に縦に急いではいけません。
相手がどんな守備をしてきても、極力ポゼッションを継続しなければいけない。
カオスへの適応は必須です。縦に速い攻撃も必須です。いろんなことをやらなければいけません。
しかし、バルセロナが勝つためにはポジショナルプレーが基礎になるのです。
【解決策は?】走力とバランスを両立させることができる?
最後に、今後バルセロナがやるべきことを考えていきたいと思います。
フリックが就任して約5ヶ月。走力という武器をバルセロナにもたらし一定の成果を残しています。
ただ、これまで述べてきたように大きな問題も抱えています。
個人的には、走力を活かすこと自体は賛成、一方で攻守のバランスの取り方は反対です。
なので、ここではバランス問題を解決しつつ走力も活かせるチームになるような策を考えます。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
カサドの継続なら戦士を相棒にするべき
まず1つ目の策は、「カサドの継続なら戦士を相棒にする」です。
個人的には、やはりカサドがワンボランチを務めるのは守備面でデメリットが大きいと思います。
ポゼッションがうまく行ってる時間帯は問題ありませんし、素晴らしいボール奪取をみることができる。
しかし、上述のように現代サッカーはカオスへの適応です。
周りの助けを得にくい状況で、ひとりで相手の攻撃にうまく対処できなければいけません。
特にワンボランチならその負担は相当なものであり、あのブスケッツですら手こずっていた印象です。
カサドのような小柄な選手がワンボランチでカオスに適応するには、走って戦える戦士のような選手が絶対に必要です。
参考にできるのは、3冠を達成したフリックバイエルン。
この時代のバイエルンはチアゴやキミッヒといった小柄な選手がボランチをやってましたが、相棒にフィジカルの強いゴレツカを起用してカオスに適応。
周りにも走って戦える選手を揃えており、チアゴやキミッヒの守備面でのデメリットを完全に打ち消していました。
個人的にほしい選手は、永遠のライバル”レアル・マドリード”所属のバルベルデです。
走って戦える。技術的にも優れており、献身性も兼ね備えている完璧な戦士。
バルベルデ獲得は期待できませんが、似たような特性を持った戦士をぜひ獲得してほしい。
右SBは守備重視の起用にするべき
2つ目の策は、「右SBは守備重視の起用にする」です。
ポゼッション型サッカーで今結果を残しているマンチェスターシティやアーセナルを見ても、SBは中盤の補強を担っています。
偽SBはトレンドといえる戦術ですが、カオスへの適応を考えれば現状考えうる最善の策です。
第1の理由としては、トランジションを成功させるためにコンパクトな陣形を保つ必要があること。
第2の理由としては、インサイドハーフはより攻撃的な役割を担い、FWとともに高い位置でプレーする必要があること。
つまり、高い位置を取るインサイドハーフの代わりに誰かがボランチ脇を固めてコンパクトネスを保つために偽SBは最善なのです。
今のようにどうやっても中盤のインテンシティが足りないのであれば、偽SBは絶対にしてほしい!!
CBはかなりの実力者を採用するべき
3つ目の策は、「CBはかなりの実力者を採用する」です。
いまだ財政難から抜け出せない状況なので今いるCBの成長を待つしかないですが、大きな結果を残すためには世界屈指のCBが必要です。
今スタメンとして起用されているのは、33歳イニゴと17歳クルバシのベテランと若手のコンビ。
まずクルバシは素晴らしい可能性を秘めていますが、まだ17歳なので当然ながら世界屈指のCBではない。
そして、33歳のイニゴは数多くの場面でチームを救うプレーを見せていますが、絶対的信頼とまではいかない。
スタメンの2人は素晴らしいです。しかし、リスクのある攻撃型サッカーをやる以上、もっとできるCBがいなくてはいけません。
とはいっても、世界屈指のCBと呼べる選手はほとんどいないですし、どのチームも離さないでしょう。
アーセナルはサリバやガブリエウを手放すわけない。
リバプールはファンダイクやコナーテを手放すわけない。
なので、結局バルセロナは自分自身で世界屈指のCBを育てなくてはいけませんが、それには何年もかかるはず。
クルバシは将来有望ですし、アラウホもいます。ダイヤの原石は手元にある。
今季はリーグ優勝の可能性もありますし、国王杯も射程圏内でしょう。ただCLはまだ高い壁。
CL制覇という最も困難なミッションを達成するためには、バルセロナは辛抱強く待てるでしょうか?
まとめ:【首位陥落】バルサがフリックの夢を叶えるために必要なこと
今回の記事では、バルセロナ対アトレティコよりバルサの問題を解説しました。
シーズン序盤の勢いはなくなりつつあり、相手の対策にいかに対処できるのかが問題となる時期。
リーグ戦では結果を残せていませんが、まだまだ試合は残っているのでそこまで心配することはない。
攻撃がうまく回っていますし、試合全体と見ればパフォーマンスは上々かと。だからこそより成長したチームを求めてしまいます。
それでは、今後のバルセロナに注目していきましょう!!
また、10月時点のバルセロナの現状を分析した記事もありますので、ぜひご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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