手腕が問われるボランチなきポジショナルプレー
昨季プレミア4連覇を達成したマンチェスターシティ。常勝軍団として今季も複数タイトルを狙う。
ですが、チームの心臓であるロドリが今季絶望のケガで、シティにとっては非常にシビアな状況です。
ロドリのいないシーズンを過ごすのは初。要のいないチームはどのようにシーズンを乗り切りタイトルを取るのか?
まずは、ロドリ不在の影響度と乗り切り方を見ていきたいと思います。
ペップにとってボランチは命
前半33分ごろのプレー。優れたポジショニングとスキルで前線にボールを届けるブスケッツ。
優れたポジショニングは相手に大きなダメージを与え、攻撃では相手を分断し、守備では相手を包囲します。
そんなポジショニングという技術を最大限活用するのが、ペップが信奉するポジショナルプレーです。
各選手が状況に応じて適切なポジションングを行い、その優位性を活かして攻守両面で相手を支配する。
そのポジショナルプレーで最も重要になるのがボランチ。上動画のプレーのように、味方を相手のプレッシャーから解放できる能力が求められる。
サッカーではスペースと時間をどれくらい持てるのかが重要であり、厳しいプレッシャーからどのように逃れるのかが鍵。
ただ、現代においてはインテンシティの向上により各選手にかかるプレスのプレッシャーは増し、パスを繋ぐのもやっとです。
だからこそ、各選手を相手のプレッシャーから解放してスペースと時間を与える役割を担うボランチは、ペップのチームにとって必要不可欠なのです。
ロドリの代役はいない
マンチェスターシティにおけるボランチ役はロドリ。チーム内、いや世界を見ても代役はいないほどの実力者です。
攻守両面で優れたポジショニングを取り、ペップが目指すハイレベルなポジショナルプレーを成立させている選手。
また、時にはインサイドハーフのような動きも行うこともでき、重要なゴールを奪う力も持つ。
パスの種類も豊富で、どんな距離でも正確なパスを出せる。
足元の技術に関しても文句なし。いまや定石とも呼べるボランチ潰しにも屈せず、相手のプレスを回避できます。
守備面においては、プレスの正確さや空中戦の安定感、それらを支えるプレー予測。
これほど多才な能力を持ち、しかも安定してハイレベルなプレーができるボランチはいない。
チーム内のMF陣を見ると、インサイドハーフ適性が非常に多く、ボランチ適性はいないです。
またDF陣は偽CBや偽SBをしますが、あくまでMFの補助的な戦術なので、純粋なMFとしてプレーすることはできない。
チーム内に代役がいないので、冬の移籍で代役を取りたいところですが、ロドリレベルのボランチは皆無。
もはや違う形でポジショナルプレーを成立させるしかない状況といえます。
個人的提案:ロドリ問題の乗り切り方
ロドリの代役を見つけられない現状において、どのようにチームを成立させるのか?
まず考えるべきは中盤のインテンシティ。今いるMF陣ではコバチッチが一番計算が立つ。だからこそ今採用されている”ボランチ”コバチッチは1つの正解。
ただ、コバチッチのボランチ採用で問題となるのは、やはり優れたポジショニングによるプレッシャーからの解放ができなくなること。
コバチッチのプレースタイルは運ぶドリブルを活かしたチャンスメイクであり、ポジショニングが特徴的な選手ではない。
ロドリに代わって各選手にかかるプレッシャーを解放させるには、DF陣による効果的な補助が不可欠。
これまでやってきた偽CBや偽SBを使い、コバチッチとともに相手MFを引き摺り出し、インサイドハーフを自由にさせる。
現状ではボランチ2枚体制は窮屈な印象を受けますが、2月までに改善してほしい。
そして、プレッシャーにさらされやすくなったインサイドハーフには、より一層の活躍をしてもらう必要がある。
これまでとは違いスペースと時間を得られない状況において、狭いスペースで効果的なプレーができるインサイドハーフが必要。
偽CBや偽SBがインサイドハーフのような動きを取りにくいので、より一層インサイドハーフの個人的な負担は増えるが仕方ない。
また攻撃に厚みを増し、守備での強さを維持するために、より中央に密集したプレーが求められる。
そうなるとサイドに人数を割けないので、WG陣の単騎とDF陣の効果的なオーバーラップが必要です。
昨季の問題だったWG陣の破壊力。今季はより一層課題となると思うので、WG陣の奮闘に期待したい。
そして、WG陣だけでは単調な動きになる可能性もあるので、DF陣の参加も必要。
最後に戦い方に関しては、前半は様子見で後半勝負という、より安全な試合運びが必要でしょう。
ロドリがいなくなり攻守両面での支配力が低下するので、不安定な展開が増えるはずです。
そうなると、単調な攻撃や危険なカウンターも増えますし、試合に勝つことはより一層難しくなる。
だからこそ、潤沢な選手層を90分間で活かし切る試合運びを行うこと。
より堅実な試合運びをすることでロドリがもたらしていた安定感を得ることも今季やるべきことだといえます。
現在リーグでは2位、CLでは3位とうまくロドリ問題と付き合いながら結果を残している。
プレーに関してはロドリ不在の影響が見て取れますが、ただこれまで培ってきた戦術の幅が功を奏しています。
新銀河系軍団は今シーズンも素晴らしいサッカーを見せてくれるでしょう。
序盤戦で見られた最強集団の懸念
ここでは、今季序盤戦から見えた最強集団マンチェスターシティが持つ懸念点を見ていきたいと思います。
現代最強チームであるマンチェスターシティには特に大きな課題はない。
ただ、どれだけ高いクオリティを持つチームでも完璧ではなく、勝利を逃す可能性はある。
序盤戦を見る限り、ロドリ抜きのマンチェスターシティには勝利を逃す懸念点が存在します。
上述の「ロドリ問題の乗り切り方」と関係する懸念点を1つずつ見ていきましょう。
懸念1:インサイドハーフの破壊力
懸念点1つ目は「インサイドハーフの破壊力」です。
マンチェスターシティのチャンスメイクを担うインサイドハーフ。ここの破壊力がチームの破壊力を決定づけるといえる。
そんな中で、一番頼りにしているデ・ブライネが負傷離脱し、昨季に続きまたも攻撃の要を失った。
一方で、三冠達成の立役者の1人であるギュンドアンがバルセロナから戻ってきたことは良いニュースです。
デ・ブライネ抜きでのインサイドハーフ運用をうまくするには、攻撃型とバランス型を両立させることでしょう。
攻撃型は自分自身で得点を狙えるトップ下寄り選手であり、バランス型は組み立てに影響を与えられるセンターハーフ寄りの選手。
個人的に、ギュンドアンとルイスはバランス型で、フォーデンとデ・ブライネは攻撃型。そしてベルナルトは両刀。
この2タイプを1枚ずつ使うことで、組み立てとチャンスメイク両面をカバーでき、守備面でもバランスが取れると思います。
ギュンドアンとルイスというバランス型2枚を併用したニューカッスル戦での苦戦は必然だったといえる。個人的な出来も悪かったですが。
もちろん下位チーム相手なら併用しても勝てないといけないですが、相手が強くなれば攻撃力不足は否めない。
攻撃力を維持するためにはやはり攻撃型を採用するほかなく、特にフォーデンの活躍は必須でしょう。
インサイドハーフの適切な運用、そして各選手の活躍が特に求められるシーズンです。
懸念2:WGの明確な役割
懸念点2つ目は「WGの明確な役割」です。
中央でのプレーに人数を割く必要がある今シーズン。WGの活躍は非常に重要になると先ほどいいました。
ただ現状においては、役割が不明な場面が多々あり、サイドで十分な攻撃力を確保できないときがある。
突破力を期待して獲ったであろうサビオ。良い突破も見られますが、安易なパスが多い。
グリーリッシュも持ち前のキープ力を活かしたプレーも見られますが、パッとしない。
もっと攻撃力を得るには、ドリブル突破ならもっと仕掛けるべきだし、チャンスメイクならインサイドハーフなどがもっと絡むべきです。
ただただWGにボールを渡して、中央にスペースができることを待っていても一生無理。
それぞれのWGがどういう役割で、他の選手はどう絡むのかを明確にしていきたい。
懸念3:試合を決められるチーム
最後の懸念点は「試合を決められるチーム」です。
タイトルを取るチームは重要な試合でこそ勝てるチームです。
昨季のレアルマドリードの快進撃を見れば、試合を決められるチームとそうでないチームの違いがわかるでしょう。
プレミア4連覇を達成した昨季のシティですが、重要な試合にことごとく勝てなかったシーズンでもありました。
FAカップ決勝ではマンチェスターユナイテッドに敗れる。
CLではレアルマドリードを試合内容では圧倒したもののベスト8敗退。
正直2年連続3冠も狙えた強さはあったはずが、強豪との試合を軒並み勝ちきれずにチャンスを逃してしまった。
今季に関しては、まずコミュニティシールドをマンU相手に勝ちきり優勝。若手主体ながら重要な試合で結果を残せました。
ただ、シーズンは長い。特に2月からが本番と呼べ、重要な試合が増えてくる。
ロドリもいない、デ・ブライネも復帰時期未定。選手層は厚いが中心選手がいないことは大きなダメージでしょう。
そんな中でも重要な試合で勝てるチームであると証明できるのか?2月以降の戦いに注目したいですね。
3冠を期待させる好材料と展望
最後に、22−23シーズンに続く3冠に向けて、個人的に好材料となると思う要素と今季の展望を書いていきます。
もはやチームの土台を完成されており、あとはすべての選手が力を発揮できること、それを支える戦術の幅のみが問題。
夏に選手を獲得し、下部組織からも有望な選手が上がってきている今季。
まだ加入が浅い選手の適応も進んでいると感じる。
それでは1つずつ見ていきましょう。
好材料1:破壊力のあるWGの獲得
好材料1つ目は「破壊力のあるWGの獲得」です。サビオの獲得は22−23シーズンで強力なオプションになっていたマフレズの再来。
22−23と23−24シーズンの大きな違いは、右サイドの攻撃力。マフレズを失い個人での突破力を失っていました。
もちろんそれでも十分強いですが、大きな武器の1つを失っていたのは事実。3冠達成を阻んだ大きな原因です。
そんな昨季の問題を踏まえて、今季はブラジルから強力アタッカーであるサビオを獲得。
シティへの適応は簡単ではないですが、現状では良いプレーが多々見受けられますね。
突破型とチャンスメイク型の両方を両サイドにおけるようになった今季に期待できそうです。
好材料2:グヴァルディオルの適応
好材料2つ目は「グヴァルディオルの適応」です。今季は攻守にわたって素晴らしい。
昨季は加入1年目で適応に苦しんでいるように見え、攻守両面でミスが多く、持っている能力を十分発揮できているとは言えなかった。
しかし、名将グアルディオラのもと徐々に適応してきたグヴァルディオルは今季素晴らしいプレーを見せています。
守備ではW杯で見せたような圧倒的なプレーをシティでも見せはじめている。
そして、攻撃においても持ち前のスキルとIQを駆使してWGとともに左サイドを蹂躙。
今季のグヴァルディオルは攻守にわたってキープレイヤーになるでしょうね。
好材料3:若手インサイドハーフの著しい成長
好材料3つ目は「若手インサイドハーフの著しい成長」です。
シーズン前に行われたマンチェスターユナイテッドとのコミュニティシールド。
過密日程や怪我人の影響もあり、インサイドハーフ2枚をオライリーとマカティという若手に任せました。
もちろんミスは多かったですが、トップレベルの試合で十分なプレーを見せつけ、1つ目のタイトル獲得に大きく貢献しましたね。
まだまだシーズン通して稼働できる選手ではないですが、十分計算が立つ選手であることを証明。
チームにとって下位チーム相手など主力を休ませたい試合において有力なオプションを手に入れたと言える。
そして、ルイスはもはや主力であり、フォーデンはチームの核になれる存在でしょう。
ギュンドアンとベルナルトのベテラン勢に大きく頼ることなく、いまいる若手でも十分な成績を残せると思える。
3冠達成は若手インサイドハーフの出来に大きく左右されるので、素晴らしい活躍を期待したいですね。
今季展望:ロドリ問題を乗り切れるはず
最後に今季の展望を書いていきたいと思います。
まず、序盤戦を見る限りロドリ抜きでも3冠を狙える力はある。特にフォーデンには期待。
途中出場とはいえ、中央をかなり締めていたニューカッスル相手に何度もチャンスを作っていたフォーデン。
今季のシティにとって必要不可欠となる「狭いスペースでのチャンスメイク」に関してはフォーデンが一番期待できるし、最大の武器となり得るはず。
だからこそ、ニューカッスル戦のような活躍をフォーデンがコンスタント見せてくれれば、タイトル獲得に大きく前進するでしょう。
また、DFラインの守備も昨季と比べて安定しているように思える。
単純な失点数ではなく、重要な場面でしっかり無失点で終えられるのかが守備にとっては大事。
今季は試合の流れを掴めるような守備を期待できるので、タイトル獲得により近づくことができるでしょう。
最後に、最も困難なタイトルであるCLにおいて、最大のライバルであろうレアルマドリードが今季は苦戦しそうなことも追い風になり得る。
強力なチームが多いCLですが、優勝候補に数えられるチームは片手に収まる程度。
新監督を迎えていたり、大幅な選手の入れ替えなどで、優勝を大きく左右する要素を十分兼ね備えているチームは少ない。
リバプールやバルセロナといった現在好調なチームはいるが、選手の経験値から言えばライバルとなり得るかどうかは疑問。
やはり経験がものをいうCLにおいては、レアルマドリードこそが最大のライバルであるが、今季はずっと苦しみそうな予感。
チーム状況とライバルの動向から見ても、やはり3冠を期待してもいいシーズンといえますね。
まとめ:【3冠へ】ロドリなきマンCの運用と期待
今回は24−25序盤でのマンチェスターシティの特徴や課題を解説しました。
チームの中心を失いながらも、やはり最強軍団と思わせる戦いぶりを見せているシティ。
3冠を狙うチームとして、どれだけの完成度に持っていけるのかを注目していきたいですね。
昨季の雪辱を果たせるのか?
今季も新銀河系軍団の戦いに注目していきます!!
ちなみに、昨季のシティを分析した記事もありますので、今季シティをより知るためにもぜひご覧ください。
・2月ごろのシティ
・レアルとの激闘
最後までご覧いただきありがとうございました。
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